貸切バスの年間契約とは?計算方法や契約の流れ、メリット・デメリットを詳しく解説
2025/04/17
貸切バスの年間契約は、送迎やイベントで定期的にバスを利用する際に大変便利な制度です。学校や企業のイベントに多く利用されており、1台の車両を決められた日数・形態で使用できます。貸切バスの年間契約は一般的な貸切バスと計算方法や契約の流れが異なりますので、利用する際はメリット・デメリットも含めしっかり確認しましょう。
貸切バスの年間契約とは

貸切バスの年間契約とは、業務単位ではなく通年で貸切バスをレンタルする契約のことです。通勤や通学での送迎などで利用されることが多く、業務単体で利用するよりも低コストで貸切バスを利用できます。
レンタルできる車種は、小型・中型・大型と幅広いです。そのため、目的やニーズによって選択できるという特徴があります。また、貸切バスの年間契約では1台の貸切バスを決められた日数、同じ条件で使用する場合に限られるので、定期的に同じ条件で貸切バスを利用する際には最適ですよ。
貸切バスの年間契約における条件は、1台の車両を決められた日数であり、同じような形態で使用することです。1回でも異なると年間契約ができませんので、注意してくださいね。
貸切バスの年間契約特例とは
貸切バスの年間契約では特例も使用可能です。年間契約特例を利用することで、約3割引になり、運賃の記載欄に「年間契約による」と記載されます。年間契約特例の計算方法は以下の通りです。
■貸切バスの年間契約特例を求める計算式
1日あたりの貸切バス運賃(※1)・料金×平均的な稼働日数(365日×稼働率(※2))
※1 貸切バス事業者が国へ届け出た運賃・料金を確認し、運賃・料金の上限・下限額の範囲内の単価を用いて算出
※2 貸切バス事業者の実績実働率(当該貸切バス事業者に要確認)と地域ブロックの平均実働率(管轄運輸局に要確認)
なお、上記計算式により算出した額で、平均的な稼働日数の1.4倍の日数まで稼働が可能です。貸切バス事業者は、年間契約締結後、契約額および契約内容を国に届けなければなりません。国から貸切バス事業者に対して契約した運賃・料金の変更が命じられることもあるため、契約の前にはしっかり料金を確認しましょう。
貸切バスの年間契約額の計算方法
ここでは、貸切バスを年間契約する際の料金計算方法をご紹介します。運賃の計算方法や実働率といった専門用語もあるため、参考にしてみてください。
年間契約額の計算式
貸切バスの年間契約額は以下の計算式で算出します。
■貸切バスの年間契約額を求める計算式
年間契約運賃=1日の運賃×365日×実働率
実働率とは、1年間におけるバス車両の稼働率のことです。計算式に利用する実働率の決定は運輸局が提示する平均実働率と貸切バス事業者の実績実働率との間で、双方の協議で決定します。
また、稼働日数は338日を限度とし、バス会社と顧客との双方協議の上で決定します。稼働日数の計算式は以下の通りです。
■実働率を求める計算式
365日×実働率×1.4倍
単純に365日に実働率をかけた稼働日数ではビジネスとして成り立ちません。そのため、調整率の1.4倍がかけられます。さらに、1日の走行時間と走行キロが超過した場合は、別途精算する旨を明記する必要があります。
1日の運賃
1日の運賃の算出方法は、通常の貸切バスの計算方法を使用します。
■貸切バスの1日の運賃を求める計算式
(時間×時間制運賃)+(距離×キロ制運賃)
時間制運賃には、出庫前点検・帰庫後点検に必要な安全管理時間(各1時間の合計2時間)も加算します。また、使用する曜日によって1日の運賃が異なる場合は、一番高い日の運賃になる仕組みです。
例えば、大型バスで3つのパターンの企業送迎を考えている場合、関東エリアの運賃で計算すると、一番高い②の運賃が適用されます。

※関東エリアにおける大型バスの新公示運賃額を適用した場合(時間制運賃6,580円・キロ制運賃160円)
出典:新公示運賃額
実働率
実働率は、実際に1年間に動いた車両数を、1年間の平均保有車両数に365をかけた数値で割った数値です。いわゆる、バス会社が前年度にどれくらい仕事をしたのかを表す数値となります。
■バスの実働率の計算式
実働率=1年間に実際に稼働した車両数(延実働車両数)÷(1年間の平均保有車両数×365:延実在車両数)
年間契約の実働率は「貸切バス事業者の実際の実働率」と「国土交通省が定めた運賃ブロックの各実働率(関東ブロックの場合、標準実働率67.58%)」の間で決定します。バス会社の実働率が50%の場合、50%から67.58%の間で決定します。
年間契約額の具体的な計算例
実際に貸切バス年間契約額の具体的な計算をしていきましょう。まず、バスの実働率の計算です。
■関東ブロックで営業する貸切バス会社Aが、進学校Bの通学手段として貸切バスの年間契約を行う場合
【条件】
- 国土交通省が定めた関東ブロックの標準実働率は67.58%
- 1日の運賃は月~水曜日が60,000円、木~金曜日が40,000円 ※土日祝日は運航休止(祝日は20日とする) → 一番高い60,000円を適用
- 貸切バス会社Aの実働率は48.24%とする(昨年の実績)
①年間契約運行日数を計算する
進学校Aは土日運休の年間240日を年間契約運行日数とします。
②年間240日に必要な実働率を逆計算
■実働率を求める計算式
365日×実働率×1.4倍
240日(年間契約運行日数)÷1.4÷365日=0.4696
実働率=46.96%
③年間契約運賃の計算
■貸切バスの年間契約額を求める計算式
年間契約運賃=1日の運賃×365日×実働率
60,000円×365日×46.96%=10,284,240
年間契約運賃=10,284,240円(年間240日利用する場合1日42,851円)
貸切バス年間契約の流れ
貸切バスの年間契約を行う場合は、バス会社と協議したり契約書を作成したりしなければなりません。大まかな流れは以下となります。

さらに詳しく見ていきましょう。
1.貸切バス会社と利用者で協議する
まずは貸切バス会社と利用者で協議が必要です。1日あたりの走行時間や走行キロ、実働率やバスの稼働日数から、年間契約額を算出します。
2.年間契約書を作成する
続いて年間契約書の作成です。契約書には、以下の内容を記載しましょう。
- 1日あたりの走行時間
- 1日あたりの走行キロ
- 実働率
- バスの稼働日数
- 年間契約額算出計算式
3.運賃設定の届け出をする
契約期間中に、発注者の要請により1日あたりの走行時間・キロを超えた場合は、1日ごとに精算します。また、運送引受書の運賃欄に「年間契約による。」と記載し、精算があった場合は精算運賃を備考欄に記載しましょう。
4.運行開始
契約書の提出が終われば運行開始です。
貸切バス年間契約のメリット

貸切バスの年間契約は契約する顧客、バス会社双方にメリットがあります。貸切バスのメリットには、それぞれ以下が挙げられます。
一般的に貸切バスの年間契約では、顧客側には貸切バスに必要な人件費や維持費、運転手手配に必要な事務作業などが削減対象となり、大幅なコスト削減が可能です。一方で、バス会社には営業コストの削減や受注リスクの低減などの経営リスクをカバーでき、顧客との良質な関係の維持・向上が可能であり、安定した売上確保にもつながります。
利用者のメリット
顧客側のメリットは以下となります。
- 単発契約よりも費用を抑えられる
- 従業員、運転手の人件費削減
- 駐車場費用の削減
- 通勤手当の削減
- 車両管理、整備などの維持費削減
- 運転手手配業務の不要
バス会社のメリット
バス会社のメリットは以下となります。
- 営業コストの削減
- 受注リスクの低減
- 顧客関係の維持、向上
- 安定した売上の確保
貸切バス年間契約のデメリット

貸切バスを年間で契約したからといって、貸切バスが使い放題なわけではありません。国土交通省が定める「一般貸切旅客自動車運送事業者と旅行業者等との間で締結する年間契約等に対する取り扱いについて」では、以下のように定められています。
(3) 年間契約の算出基礎を超える場合の取り扱い旅行業者からの要請により、年間契約の算出基礎となる走行時間(X時間)及び走行距離(Yキロ)を超えた場合の運行については、1日ごとに時間運賃、キロ運賃を基に別途精算を行うこととし、この旨を年間契約書に明記しなければならない。
出典:一般貸切旅客自動車運送事業者と旅行業者等との間で締結する年間契約等に対する取り扱いについて
とはいえ、想定する時間や距離が大幅にずれることはそうないため、全体で考えるとやはり年間契約の方が使いやすいと言えるでしょう。
まとめ

貸切バスの年間契約は、定期的な送迎やイベントなど継続的にバスを利用する際に大変便利です。学校や企業の行事で活用されており、あらかじめ決められた日数や使用形態に応じた使い方ができます。
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