セーフティバスとは?安全な貸切バスの選び方
2025/07/14
貸切バスの安全性が評価される「セーフティバス」をご存じですか?事故防止への関心が高まる中、バス選びの基準は「安さ」から「安全性」へと変化しています。2025年度からは認定制度の審査基準が大幅に改正され、書類だけではなく教育や健康管理、先進安全装置の導入など実際の取り組みがより重視されるようになったのです。今回はセーフティバスの概要と安全な貸切バスの選び方について解説します。
セーフティバスとは

貸切バスは観光バスとしてだけではなく、団体やイベントの輸送など多くのシーンで利用されています。
しかし、サービスを利用する旅行者や旅行会社は、利用する貸切バスの安全が確保されているのかを判断することが難しいのも現状です。
そのため、安全性が考慮されていない貸切バス事業者を選んでしまう可能性もあります。
そこで台頭してきたのが「セーフティバス」です。
「セーフティバス」とは、日本バス協会が実施する厳正な審査基準をクリアしたバスのこと。
貸切バスの安全性や安全の確保に向けた事業者の取り組みを強化することで、より安心な貸切バスサービスの利用を目的としています。
セーフティバス(貸切バス事業者安全性評価認定制度)

セーフティバスに認定されるためには、「貸切バス事業者安全性評価認定制度」を受ける必要があります。
バス会社の安全への取り組みはお客様から見えにくいもの。
そのため、平成23年から貸切バス業者の安全性や安全確保に取り組む状況を「見える化」する評価制度である「貸切バス事業者安全性評価認定制度」が開始されました。
全37項目にのっとり行われる審査を通過した貸切バスのみ「セーフティバス」の認定を受けられます。
その審査内容は厳しく、不正ができないようにするなど、貸切バスの安全性確保に向けた取り組みが決められているのです。
気になる認定制度の審査基準
貸切バス事業者安全性評価認定制度は、日本バス協会の訪問調査により行われ、運行管理や安全対策、法令対応など、事業者の総合的な安全性を評価します。これまでは三ツ星での評価でしたが、2025年度からは5段階の星で評価結果が表示されるようになりました。
主な審査項目は、以下です。
- 行政処分・法令遵守の厳格化
- 安全性に対する取組状況(上位事項)
- 規則改正への対応
- 運輸安全マネジメントへの取り組み
2025年度に制度が見直されてからは、安全対策・健康管理・教育などの現場レベルの取組が以前より強く問われるようになりました。これにより、単なる書類整備よりも「実際に安全対策を行っているか」が評価の基準となり、利用者が安心して貸切バスを選べる制度に進化しています。
不正ができないランクアップ制
実はこれまで、申請書だけ整えるのみで実際の安全対策が整っていない事業者も少なくありませんでした。そのため、2025年度の改正では「安全対策の形だけを整えた帳尻合わせでは通用しない」「継続的な改善ができているかを段階評価でチェックする」仕組みにし、ふせいな加点狙いを避ける構造になっています。
貸切バス事業者安全性評価認定制度は「星の数」によってランク付けを行っています。これまでは三ツ星での評価だったものの、2025年度の変更により五ツ星の5段階における評価になりました。例えばこれまでは一ツ星認定事業者が80点を取得したら三ツ星になっていましたが、1つ上の二ツ星へ昇格となります。また、四ツ星で95点以上得点した場合に初めて五ツ星に昇格します。
五ツ星認定=95点以上 | ||
---|---|---|
新規 | 60点〜 | ★ |
更新① | 70点〜 | ★★ |
更新② | 80点〜 | ★★★ |
更新③ | 90点〜 | ★★★★ |
更新④ | 95点〜 | ★★★★★ |
たとえ配点で満点を取っても、初回申請で四ツ星・五ツ星にはならないので注意しましょう。高ランク認定されるには、継続的な実績と改善努力、更新審査を経なければなりません。
日本で認定されているセーフティバスの数とは
2025年7月現在、貸切バス事業者安全性評価認定制度の認定を受けているのは、2,017事業者で、そのうち最高ランクの三ツ星認定を受けているのは1,137事業者となっています。
認定年月日 令和6年12月26日(木)
総認定事業者 2,017者 (前年2,028者)
- 三ツ星(★★★)1,137者 (前年1,060者)
- 二ツ星( ★★ ) 196者 (前年259者)
- 一ツ星( ★ ) 684者 (前年709者)
※貸切バス事業者数は3,423者(令和5年度末現在)
「貸切バス事業者安全性評価認定制度」から安全性への取り組みを評価され、認定を受けた事業者には「SAFETY BUS」のステッカーが配布される仕組みです。
貸切バスの安全性に関しては、該当するバスに「SAFETY BUS」ステッカーが貼ってあるか否かも判断材料の1つとなります。
なぜ貸切バス事業者安全性評価制度ができたのか

そもそも、なぜ「貸切バス事業者安全性評価制度」ができたのかご存じでしょうか?
平成23年に取り組みが開始された「貸切バス事業者安全性評価制度」ですが、それまでは貸切バスの安全性を示す評価制度は存在しませんでした。
ここでは「貸切バス事業者安全性評価制度」ができるまでの道のりと、その背景を見ていきましょう。
法整備までの長い道のり
平成23年に制定された「貸切バス事業者安全性評価認定制度」ですが、それまで貸切バスの安全性を示すような仕組みは存在しませんでした。
しかし、平成19年に大阪府・吹田市で起きた「吹田スキーバス事故」を発端に、貸切バスの安全性が考えられるようになったのです。
この事故は、貸切バスの運転手が、法律で定められた労働時間を上回る過労状態だったことが後の調査で明らかになりました。
その後、貸切バスに関する安全等対策検討会が開催され、貸切バスの安全性を図ろうと「貸切バス事業者安全性評価認定制度」が確立され、安全確保の取り組みを強化したセーフティバスという仕組みが生まれたのです。
それでもなくならない事故
ところが、貸切バスの安全を促す「貸切バス事業者安全性評価認定制度」を制定した後も、貸切バスによる衝突事故や、ドライバーの健康が起因となって起こる事故が多発しています。
令和1年には、貸切バスの事業者は4,000事業者を超えていますが、貸切バス事業者の数が一番多かった平成23-25年から500事業者ほど減っているのが現状です。
それでも、セーフティバス認定されている数が事業者の約半分である【2,059事業者】であることから、貸切バス事業者の安全性はまだまだ発展途上の段階だと分かりますよね。
安全教育へ力を入れる貸切バス会社
近年、安全教育に力を入れる貸切バス会社が増えてきました。
特に「貸切バス事業者安全性評価認定制度」が確立されてからは、貸切バス事業者の安全性・安全の確保に向けた取り組みが可視化されるように。
その評価を認定・公表することで、貸切バス利用者や旅行会社がより安心して事業者を選択できます。
貸切バス事業者は、安全への取り組み促進により安全なサービスを提供できるのです。
使う側も提供する側も、安心して貸切バスと向き合いたいですね。
セーフティバスに関する素朴な疑問

厳しい審査基準により認定されるセーフティバスですが、取り消しに該当する行為や書類審査の内容など、気になることも多いですよね。
ここでは、セーフティバスに認定された後の流れや書類審査の内容、そもそもセーフティバス認定されていない貸切バスの安全性についてご紹介します。
事故を起こしたら星は取消しになるのか
セーフティバスに認定された後、死傷事故や転覆事故・悪質違反による事故を起こしたり、車両停止以上の行政処分を受けたりしてしまうと、認定が取り消されてしまいます。
それだけではなく、一定期間「貸切バス事業者安全性評価制度」への申請も不可に。
継続的に厳しく安全性の管理をしている「貸切バス事業者安全性評価制度」。
事故や違反を起こした貸切バスは、そもそも認定の審査すら受けられない仕組みになっているため、高い信頼性があると言えますね。
書類審査では何を見ている?
「貸切バス事業者安全性評価制度」では、現地調査以前に書類での審査も行われます。形式的な書類の有無だけではなく、実効性のある安全管理体制や運用実態が整っているかどうかも重視し確認されます。
①安全方針・目標
- 会社としての安全最優先の姿勢を示した文書
- 経営トップの署名や押印付きの掲示資料
②年間教育計画・実施記録
- 年間で誰にどのような教育・研修を、いつ行うかの計画表
- 実施後には出席簿・写真・教材・アンケート等を添付し、記録として残す
③健康診断記録・検査体制
- 一般健康診断(年1回)や適齢診断(65歳以上対象)、SAS(睡眠時無呼吸症候群)検査などの記録
- 対象者の一覧と受診日、実施機関名を明記
④行政処分通知の写し
- 過去2年間における行政処分(違反点数や指導記録)の写し
⑤運転者台帳・給与明細
- 運転者ごとの台帳(氏名・免許種別・有効期限・経歴など)
- 給与明細または営業所ごとの平均給与表
⑥ASV装置の搭載車両一覧
- 車両ごとの装備一覧(車種・型式・導入年月・装備内容)
計画書だけでは加点されにくく、実施記録や証拠資料が重視されるため、実施後は書類をしっかりと保管しておきましょう。なお、書類の記載内容に不備や矛盾があると審査打ち切りや減点対象になる可能性もあるので、注意してください。
セーフティバスの星がないバス会社は安全ではないのか
「セーフティバス認定を受けている貸切バス会社はしっかりと安全性が確保されている。」
では、セーフティバスの星を持たない貸切バス会社は、安全ではないのでしょうか?
結論からいうと、セーフティバスの星がないバス会社でも安全なことがほとんどです。
「貸切バス事業者安全性評価制度」の制定後、平成25年には適正な労働時間や走行距離・車両のチェックを定めた「高速・貸切バスの安全・安心回復プラン」が国から発表されました。
そのため、セーフティバスの星がなくても、ほとんどの会社はこの法令に基づいた安全管理や労働時間で業務を行っています。
貸切バスによる事故が多発・社会問題に発展したことも起因し、貸切バス会社の安全管理への意識も高まってきていることも、安全である理由の1つでしょう。
セーフティバスを予約するためには?

国や日本バス協会が主導する安全性への取り組みもあり、バスの安全対策は確実に強化され続けているため、近年はだれでも手軽にセーフティバスを借りられるようになりました。
「貸切バス事業者安全性評価認定制度」の認定を受けた事業者は、国土交通省並びに日本バス協会のホームページ上に公表されています。
また、セーフティバス認定された貸切バスは、車体に「SAFETY BUS(セーフティバス)」のステッカーが貼られているため、各事業所のホームページや従業員の名刺でも確認可能です。
公式ホームページへの記載や、ステッカーが貼っていない場合は、直接貸切バス事業者に問い合わせてみるのも1つの手ですね。
大切な家族や社員の移動手段である貸切バスの安全対策は、貸切バスを選択する上で重要な判断材料です。
国や日本バス協会が継続的に安全対策への取り組みを強化しており、安心して送迎できる「SAFETY BUS(セーフティバス)」の導入が広がっています。
用途に合わせたプラン、車種を選択でき、かつ安全性を確認した上で、貸切バスを選びたいですね。
インターネット・FAXで簡単に見積もりを依頼できますので、ぜひ利用してみてください。